1. 音韻と文字

1.1. はじめに

ソマリ語は一九七二年以降、ローマ字による正書法が定着し(中野、1989)、今でも用いられている。

本章はIPAが読めることを前提としている。IPAについては斎藤(1997)参照。本章において // 内は音韻、() 内は表記である*1

1.2. 母音

母音は以下の10種およびその長音*2

/ɪ/ /i/ /ɛ/ /e/ /ɑ/ /æ/ /ɔ/ /œ/ /ʊ/ /ʏ/

ただし

/ɪ/ /i/ (i)
/ɛ/ /e/ (e)
/ɑ/ /æ/ (a)
/ɔ/ /œ/ (o)
/ʊ/ /ʏ/ (u)

というペアはよく似た音であるため文字上は書き分けない。

長音は

/ɪː/ /iː/ (ii)
/ɛː/ /eː/ (ee)
/ɑː/ /æː/ (aa)
/ɔː/ /œː/ (oo)
/ʊː/ /ʏː/ (uu)

のように母音を重ねて書かれる。

二重母音には

(ay) (ey) (oy) (aw) (ow)

がある。

1.3. 子音

子音は以下の22種。日本語や英語に見られない子音には巻き舌音 /ɖ/(dh)*3や、咽喉の奥で調音する /q/(q) /χ/(kh) /ħ/(x) /ʕ/(c) /ʔ/(')がある。

/b/ (b)
/f/ (f)
/m/ (m)
/w/ (w)
/t/ (t)
/d/ (d)
/ɖ/ (dh)
/s/ (s)
/n/ (n)
/l/ (l)
/ɾ/ (r)
/ʧ/ (j)
/ʃ/ (sh)
/j/ (y)
/k/ (k)
/g/ (g)
/q/ (q)
/χ/ (kh)
/ħ/ (x)
/ʕ/ (c)
/ʔ/ (')
/h/ (h)

有声子音が語末で無声音化したり、/b/ /d/ /g/ /q/ などが母音間で摩擦音化したりすることがある。

口蓋垂より奥で調音される子音の発達

口蓋垂より奥で調音される子音は日本語には /h/ しかないのであるが、ソマリ語には以下の六種がある。

      口蓋垂音 咽頭音  声門音 
無声破裂音 /q/ (q)      /ʔ/ (')
無声摩擦音 /χ/ (kh) /ħ/ (x) /h/ (h)
有声摩擦音      /ʕ/ (c)     

口蓋垂音はこの図の8、咽頭音は9、声門音は10の部分で調音する。

1.4. アクセント

強勢を伴う高低アクセントで意味が変わる。しかしアクセントは表記されない。学習用に表記する際には以下のような文字が使われることになる。

â á é í ó ú ý ẃ

参考文献

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