ソマリ語の正書法と音韻とのずれは以下のとおりである。
正書法で書かれた文章に以下のように補助記号を振るだけでこれらの問題は解消され、完全な音韻表記となる。
ソマリ語の母音体系は図1のとおりである(Wikipedia「ソマリ語の音韻論」を参照。「ソマリ語ノート」の「1. 音韻と文字」は中野暁雄による『言語学大辞典』の音声表記を用いたが、その対応表は当該記事を参照。)。
こうした音声表記は精密だが、[i]対[ɪ]、[e]対[ɛ]、[æ]対[ɑ]、[ɞ]対[ɔ]、[ʉ]対[u]の関係もわからないし、それが前舌系列か後舌系列かもわからない。それを前節の表記法に書き換えたのが図2で、実際の音声はわかりにくいが、系列がよくわかる。
ソマリ語の母音の前舌・後舌系列はアクセント同様表記されないので、新聞等の記事からデータを取ることができない。さらに、Orwin (1995) はアクセントは示しているが、前舌・後舌系列は示していない。そこでいくつかの例を以下に示して、参考に供する。
音韻表記 | 原資料表記 | 意味 | 出典 |
---|---|---|---|
a̟͜ad | æːd | 非常に | 中野1989 |
a̠͜ad | ɑːd | 行く | 中野1989 |
ca̠bdi̠qa̠͜adi̠r | ʕɑbdɪqɑːdɪr | (人名) | Abduwali Muse (Wikipedia) |
ca̠bdi̠we̠li̟ | ʕɑbdɪwɛli | (人名) | Abduwali Muse (Wikipedia), Abdiweli Mohamed Ali (Wikipedia) |
ca̠li̟ | ʕɑli | (人名) | Abdiweli Mohamed Ali (Wikipedia) |
de̟g | ɖeɡ | くっつく | 中野1989 |
de̠g | ɖɛɡ | 耳 | 中野1989 |
di̟͜id | diːd | 拒む | 中野1989 |
di̠͜id | dɪːd | 色あせる | 中野1989 |
du̟͜ul | dʏːl | 襲う | 中野1989 |
du̠͜ul | dʊːl | 飛ぶ | 中野1989 |
ji̟r | ʧir | 居る | 中野1989 |
ji̠r | ʧɪr | 年 | 中野1989 |
ma̠xa̠me̠d | mɑħɑmɛd | (人名) | Abdiweli Mohamed Ali (Wikipedia) |
mu̠͜use̠ | muːsɛ | (人名) | Abduwali Muse (Wikipedia) |